俺様副社長に捕まりました。
それから1ヶ月後私は退職した。
表向きはやりたいことが見つかってそれに向かって勉強をしたい。
なんてかっこいいこと言ったけど本当の理由は裕人だ。

桐山専務には勉強したいなら仕事をしながらでもできるだろうと
何度も引き止められた。
私も裕人のことがなければやめたくはなかった。
だけど今のままでは秘書としても女としてもいっぱいいっぱいで
今の私は秘書失格だ。

「あ~あ・・・本当にやめちゃうんだ~」
「ごめんね」
「本当に元木の野郎には腹が立つわ!誰のせいで桃が辞めると思ってんのよ!」
「もういいよ・・・」
本音を言える備品室で未来に退職の挨拶をしていた。
「だけどさ~せっかくのキャリアがさ~勿体無いよ」
たしかにほんの少し未練はあるけどやっぱりこうすることが
お互いにとって一番良い方法だと思ってる。
だから迷いはない。ただ一つ私が退職するにあたり1週間前に部内移動があった。
水沢副社長の秘書をしていた室田先輩が桐山専務の担当になり
水沢副社長の秘書をなんと未来が担当することになった。
結婚して庶務担当をしていたのになぜ未来が選ばれたのか
私も未来にもさっぱりだった。
「ところでさ~副社長の秘書ってどう?」
未来には悪いがあの社内ナンバー1のイケメンの副社長が気になるのは当たり前。
どんな仕事をするのか近くで見てみたいと思っていた。
私は副社長とほとんど話をしたことがない。
会議の時やすれ違いざまに挨拶する程度だ。
はっきり言ってかっこよすぎで近づけないって感じだ。
観賞用にはいいけど・・・
なんだか派手なイメージしかしないのよね・・・

「・・・よくわかんないのよね・・・」
予想通りの返事だった。
「どんな風に?」
「う~~ん。私ね、基本残業なしなの。同行することもしなくていいんだよね~
でも拒絶してるってわけでもなくてね。かえって気を使ってもらってるというか・・・
別に私が秘書じゃなくてもいいんじゃない?って思うんだけどね~」
実は副社長が未来を指名したらしいのだ。
結婚して残業ができないから庶務になったのに
残業なしでいいからと言われたらしい。
「でも未来を選んだって事はそれだけ仕事をかってるってことでしょ~
いい方に考えなよね。」
「うん・・・ってか桃も仕事決まったら知らせてよ。
どっちかっていうとそっちのほうが心配よ」

「うん・・・」

そして私は次の就職先も決まらぬまま退職した。
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