最後の恋にしたいから
すると彼はフッと笑ったのだった。

「智花は邪推し過ぎだな。無理もないけど……。確かに、二人は似てるかもしれない。でも、それが理由なら、もっと前から奈々子を狙ってるよ」

「あっ、そうか……。そうだよね」

私たち、オフィスが同じでも、全く触れ合うことがなかったっけ。

「そうだよ。だから、自分が沙希と重ねられてるとか、そんな風には考えないで欲しい」

ギュッと抱きしめられて目を閉じると、もう一度涙が流れた。

私の失恋なんて、とても比にならない。

それくらい課長がどれほど辛い思いをしたんだろうと、想像すればするほど、彼の過去を受け止めたいと本気で思う。

それくらい私は、課長にどっぷりハマってしまった。

「祐真さん、私があなたを幸せにしたい」

呟くように言うと、穏やかな声で返事が返ってきたのだった。

「もう、じゅうぶん幸せだよ。オレこそ奈々子を幸せにしたい……」
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