最後の恋にしたいから
私たちの会社は、大手リース会社。

主に製造機械や事務用機器など、とにかく『機械』というものを扱っている。

そしてここは本社で、営業部署には一課から五課まであり、私と彩乃は三課の営業事務の仕事をしているのだ。

受発注から経費精算まで、営業社員のサポートは何でもする。

とはいえ、名越課長は去年異動してきたばかりな上、課が違うとあまり接点がなく、同じフロアにいてもどこか壁を感じる。

課は担当するエリアで分かれているから、他課とは完全に一線を課しているのだ。

「いろいろ聞いてみたいよねぇ。課長って、外国帰りじゃない? タイ支社で二年間、勤務してきてたのよね?」

彩乃は、まだ視線を課長に向けて言った。

「うん。そうだよね。製品の製造を委託している工場とかを監督したり、現地の法人に営業に行ってたりしてたんだってね。本当、憧れちゃう」

まさにエリート課長。

彩乃が、憧れるのも無理はない。

すると、彼女は視線を私に戻し、意地悪く微笑んだ。

「何が憧れちゃうよ。奈々子には、彼氏がいるじゃん」

「え⁉︎ それはそうだけど……。でも、課長は憧れよ」

彩乃のツッコミはもっともだけど、突然彼氏の話が出てきて動揺する。

「奈々子たちって、付き合って二年半だよね? そろそろ、結婚の話が出てるんじゃないの?」
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