最後の恋にしたいから
花火とキス
会社の給湯室は、たまに誰かがコーヒーをいれたりするのに使うくらいで、無人なことが多い。

私自身あまり使う場所ではないけれど、今日は自宅から持ってきたコーヒーのパックを使う為に向かったのだった。

「あ、名越課長……。お疲れ様です」

給湯室に入るなり、課長と目が合いドキッとする。

どうやら、課長一人の様でカップを手にしたところみたいだ。

一瞬彼は、驚いたように目を丸くしていたけれど、すぐに口角を上げて笑顔を向けてくれた。

「お疲れ、古川。それ、自前?」

課長の視線は、私の手元に移動している。

「そうなんですよ。これ、お土産で貰ったブラジルのコーヒーです。けっこう美味しいんですよ。課長もコーヒー派ですか?」

この間電話で『避けるな』と言われたのを、自分なりに自覚している。

なかなか絡む機会がなくて実践出来なかったけど、ちょうどいいチャンスがやってきたみたい。

本当はドキドキするけど、笑顔を取り繕い話しかけてみたのだった。
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