不機嫌な君
…気まずい空気の中、私は鞄のポーチの中から、家の鍵を取り出した。

…このポーチが曲者だった。
女性と言うものは、いつ『女の子の日』になるかわからない。だから、常にこのポーチは必需品。

…実は、金崎部長はこれも開けて見たのだ。でも、中身が中身なだけに、ちゃんと確認もせずに、しまってしまった。

それがわかった金崎部長は、溜息をついたのは、言うまでもない。

「ちょっと、そのに座って待ってろ。送って行くから」
「いえ、いいです!迷惑かけまくってるのに、そんな事迄…」

「…迷惑ついでた」
それだけ言うと、ささっとコーヒーを淹れてくれて、私がそれを飲んでる間に、着替えを済ませると、車でアパートまで
送ってくれた。

「色々、ありがとうございました」
そう言って、頭を下げる。

「…島谷」
「…はい?」

「…誰にでも色目を使うのはやめておけ」
「え?」

「男は直ぐに、勘違いするから」
「…例えば?」

「…昨日の男」
「…」

「…それと…俺」
「…へ⁈」

驚く私を尻目に、金崎部長は行ってしまった。

…私、そんな事をした覚えがない。
悪ふざけはしたけど。

…悠斗さんにも、別に。

私はしばらく、金崎部長がいなくなった方を見つめ、考え込んでいた。
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