不機嫌な君
…って、ちょっと待て‼︎
しばらくして、ようやく我に返り、金崎部長の手を振りほどいた。

「な、なんなんですか⁈突然現れて、連れ去るなんて⁈」
私の言葉に振り返る。…その顔は、相変わらず不機嫌。

「…男に色目を使うなって、忠告してだだろ」
「なっ、金崎部長には、関係ないじゃないですか!私と金崎部長はただの上司と部下ですよね?プライベートな事に首を突っ込まないで下さい!」

一気にまくし立て、息が切れた。
「…言いたいことは、それだけか?」
「…へ?」

その言葉に、目を丸くする。

「お前って、本当に腹が立つ」
「なっ⁈…………」
反論する隙が与えられなかった。

顔を両手で挟まれ、金崎部長の顔が近づいたかと思った瞬間、私の唇に温かくて柔らかいものが重なった。

…放心状態の私。
離された唇…私の目に映ったのは、色気たっぷりの金崎部長の顔。

「…さっさと帰って寝ろ」
その言葉を最後に、金崎部長は私の前からいなくなった。

それからどうやって家に帰ったのか、全く覚えていない。
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