不機嫌な君
…また、何かを言ってる。
周りは人けがなく、静かだが、やっぱり、耳を塞がれて聞こえない。

・・・あ~も~ダメだ。
変わった人だと思ってたけど、ここまで変わってるとついて行けない。

「…お前見てると腹が立つ」
「・・・?!」

突然の声。いつの間にか耳から手は離れていた。

「…男に色目は使うなって言ったのに」
「・・・へ?・・・あれは?!」

悠斗さんの事を言っているんだろう。私は慌てて弁解を始めようとした。

「…好きだ」
「・・・ぇ・・・・」

…今なんて言った?私の聞き違い?耳がおかしくなった?

「こんな事を言うのは、性に合わない」
「・・・ぶ、ちょう」

「でも、お前が俺から離れていかないなら、たまには言ってやる」
「・・へ?・・・たまに?」

金崎部長の言葉に、目を丸くする。
それとは対照的な金崎部長の赤い顔。

…性に合わない・・・ではなく、ただ単に、恥ずかしいだけ?

「たまになんて嫌です!毎日聞きたいです!」
「バカ言うな・・・そう何度も口に出せるか」

不機嫌な顔をして、そう言った金崎部長。
私は嬉しくて、泣き笑い。

・・・でも、金崎部長にとって、女の涙は、相当心を乱すようで。

「…好きだ・・・愛してる…だから、あんな男にふらつくな」
そう言ってくれて、金崎部長の顔を見れば、さっきより一層赤くなっていた。

「…私も、部長の事、大好きです」
そう言ってそのまま、背伸びすると、金崎部長の唇にキスをした。


・・・これで、やっと私たちも両思い。
だと思ってた。
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