不機嫌な君
「ふざけてるのはどっちだ?俺は優姫を婚約者だなんて、一度も思った事はない」

ズバリ言われて、一瞬怯んだ優姫だったが、直ぐに反論した。

「私は父に右近の婚約者だって、ずっと言われ続けてきたんだから、今更そんな事言われても無理!右近のお父様だって賛成してくれてるんですから!今夜、必ずうちに来て」

金崎部長の静止も聞かず優姫は行ってしまった。

「…金崎部長、素敵な方ですね」
真顔で呟いた私。
「…ひとみちゃん」
心配そうな顔で私の名を呼んだ葉月さん。

「…私じゃ不釣り合いだなぁって、思ってたんですよね」
「…本気で言ってんのか?」

私の言葉に、そう言い返した金崎部長。

「…葉月さん、すみません、先に戻りますね」

金崎部長の言葉に答える事もせず、葉月さんにそう告げて、社食を出て行った。

…金崎部長は、私の事が好きだって言ってくれた。…愛してるって言ってくれた。…その言葉を信じたい。

…でも、私達あまりに違いすぎて…

御曹司と何の取り柄もない私では、あの人には敵わない…
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