不機嫌な君
・・・金崎部長は、泣き出した私を、優しく、壊れ物を扱うように、そっと抱きしめた。私は、金崎部長にしがみ付いた。

何も言わず、離れようとしたのに、普通なら、こんな私の事なんて、すぐに諦めるだろうに、自分の約束された未来より、私との幸せを選んでくれた。

…こんなに幸せな事はない。…こんなに私の事を思ってくれる金崎部長の事が、愛おしくてたまらない。


・・・・・・・。

その幸せを噛みしめた数秒後。私は地獄に突き落とされた。

「…部、長?」
…顔を歪め、金崎部長が、崩れ落ち、私はそれを必死に支えた。

…一体何が起こったの?

その場の状況が、理解できない。

…ただ、理解できたのは、周りから、沢山の悲鳴。
私の手には、大量の血。

金崎部長は、腰の辺りを抑えている。
・・・そこからは、止めどなく血が流れている。

・・・幸せになれる、そう思ったのに。その未来は簡単に、崩れ落ちていった。

最後に、私の視界に入ったのは、カッターナイフを握りしめた優姫の姿。そのカッターから、血がしたたり落ちていた。
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