妖刀奇譚





次にできるだけ背筋を伸ばしてみると、半円の中に顔を覆って泣いている女子を見つけた。


華道部でもあり生物係でもある井上だ。


その周辺には同じ華道部のメンバーがいて、井上を励まそうとしている。


廊下側の列に目を向けると、三谷は自分の席でハンカチに顔を埋めて泣き、そこには三谷と仲良しのグループが集結していた。


確か彼女は陶芸部で、あの花瓶は彼女が夏休み中につくったものだった気がする。


半円を構成している他のクラスメイトたちは、ただ話しているだけで何もしようとしない野次馬だった。


思葉は眉間にシワを寄せる。



「なんでみんな片付けないの?」


「え?だってそりゃ、やりにくいからだろ」


「なんでよ、別にやりにくくないでしょ。


ああやって何もしないで見世物状態にしている方がおかしい」


「あのな、泣いている女子がいる前でちゃっちゃか片付けられる奴がいるわけねえだろ」


「別に來世がやったっていいんだよ」


「おまえおれの話聞いてたか?」



來世が苦笑して、数学のプリントの上に突っ伏した。


どうやらホームルーム前に終わらせるのは諦めたらしい。


後ろのクラスメイトたちは、相変わらず集まっているだけで動こうとはしていなかった。


片付けることよりも率先して野次馬になることを選ぶなんて、どんな神経をしているのだろう。


呆れた思葉は席を立ち、掃除用具入れからちりとりと箒を出した。




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