【完】狂犬チワワ的彼氏


そう聞いたら、木塚くんが前を向いたまま答える。



「お前は何処行きたい?」

「え?えっと…」



そう聞きながら、先を急ぐ。

でも、そう聞かれたあたしはすぐにはその場所が思い浮かばない。


どうしよう…何処にしようかな。

ってか、自分からデートに誘ったくせに計画とか何にも立ててなかったし…。


そう思って迷っていると…



「…映画館な」

「!?え゙っ、」



やがて、あたしの返事を待てなくなったらしい木塚くんがそう言って次の角を左に曲がった。



「ま、待ってよ~」

「…」



その背中を、あたしは小走りで追いかける。




デートって言ったらさ、


大好きな人と並んで歩いて、

手を繋いで二人でニコニコ笑い合って、

“妃由”なんて優しく名前を呼ばれて街中で堂々とチューしたりするものだと思ってたのに。



木塚くんは…そんなあたしの理想をキレイに壊してくれる彼氏(仮)だ。



結局その日の初デートは、木塚くんが観たかったらしいアクション映画を観て、その場でバイバイした。


……今日は、家まで送ってくれないんだ。



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