悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
先ほどの反省を生かして、優しく言葉を

かければ頬を染め微笑み、謙虚に答える

と少し、視線をずらすうつむく彼女がい

じらしい。


「……これは、君が側にいれば必要ない

と思うが、預かっておこう」


「はい…3ヶ月後には私はお側にいませ

んので……」


俺が彼女を必要だと言っているのに彼女

が側に居たくないと返事をしたようで腹

立たしくなる。


手帳をパタンと閉じ、俺は秘書室のドア

の鍵をカチャンっと閉めた。


ネクタイの結び目を緩め、一歩一歩近づ

けば、後ずさり逃げていく。


彼女は、不安な表情のままガタンと机に

ぶつかり逃げ道を塞いだ。


「……ふ、副社長⁈何か気に触ることを

言ったのなら謝ります。ですから…」


最後の言葉をキスで塞いだ。


彼女は、唇を塞がれて逃げようと俺の胸

を手のひらで押してくる。離すものかと

噛みつくように唇を貪り抱きしめれば、

胸を手のひらで何度も叩き抵抗してくる

。それならばと抱きしめたまま机の上に

寝かせれば、顔が強張り次に起こる可能

性に体が硬直しているように動かない。


彼女の気持ちを和らげようと頭を撫でれ

ば表情が少し緩む。


愛らしい耳が赤くなり思わず耳殻から耳

朶まで指先で触れば、さっきまで触れて

いた唇が誘うように開く。唇をゆっくり

と指先でなぞると体がプルっと震え、ゴ

クンと息をのみ見つめてくる。


副社長⁇と小さな声で疑問を投げかけて

くる彼女の下唇を指先でなぞり呟く。


「零…零と呼べ」


拒絶する憎らしい唇を塞ぎ、舌を絡めと

り言葉を発することを許さない。


「……ふっ、…あっ…はぁ、はぁ」


口の隙間から漏れる吐息は色っぽく、背

筋に走る甘い痺れに唇を離した。


「峯岸から聞いただろう…君には恋人役

を演じてもらう。だから、こんなことに

も慣れてもらおうか⁈」


「……そんな…私にはできません」


欲情を正当化しようとすれば、無理だと

言い泣きそうな顔をする彼女に後ろめた

くなるも彼女とのキスは媚薬のように癖

になる。


拒むことは許さない…思わず最低な脅し

をしてしまった。


驚愕していた表情が、意を決したように

変わった。


セクハラで訴えるなんて憎たらしいこと

を言う彼女に守る気もない約束をする。


「約束は守るよ」


彼女が拒めないように誘惑するだけた。
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