悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
「ごめんなさい。仕事が忙しくてプロフ

ィールまでは…」


言い訳でごめんなさい。


「いいえ…市役所に勤めています」


気分を害した風でもなく笑顔で答える金

城さんに、申し訳なく思う。


興味がないみたいに感じただろうか?


ちゃんと金城さんと向き合わないと失礼

よね。


「市役所のどこに?」


「財務部 納税課です」


「…大変そうな部署にお勤めですね」


「そうでもないですよ。納税課と言って

も僕の部署は忙しい時期は過ぎましたし

、胡桃さんとデートする時間はたっぷり

あります。ですから、僕とデートして僕

を知って欲しいんです」


突然、積極的になる金城さんに心が動い

た。


「…はい。私でよければお願いします」


隣の母が頬を染め喜んでいた。


どうしてお母さんが照れているのよ。



その後、母が席を外し2人で食事をしな

がら趣味や好きな物、嫌いな物をお互い

に話して2時間はあっという間に過ぎて

言った。


ホテルのロビーで母と待ち合わせしてい

る私は、金城さんと次に会う約束をして

別れ母が来るのを待っていた。


肩を叩かれ振り向くと綺麗な女の人が笑

顔⁈で立っていた。


笑っているのに目が怖い。


彼女は、パーティであった大和会長のお

孫さん。


「あなた、確か零さんの婚約者よね⁈」


「……」


どうしよう…


「それなのにどうして⁈その格好はお見

合いよね⁈……沈黙は嘘だったって認め

るのかしら⁈」


「……」


「まぁいいわ。あなたなんて眼中にない

から…でもね」


『バチン』


頬を叩く鈍い音がし顔が横に飛んだ。


「彼とキスしていたわよね。私の物を取

るとどうなるかこれでわかった⁈」





叩かれた頬を押さえ彼女を睨む。


「あなたには、あの彼がお似合いよ。零

さんは返してもらうわね」


彼女は、去り際に振り向いて微笑んだ。


「あなたが、お見合いしていたって零さ

んに教えとくわね」


「言わないでください」


「はぁ…何図々しいこと言ってるの⁈」


般若のように恐ろしい形相になる彼女。


「私…結婚してあの会社辞めるんです」


「だから…?」


「だから、会社を辞めて彼に会わないつ

もりです」


「…そう⁈それなら早く彼の前から消え

たら…」
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