俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


顔をひくつかせる私に「どうしましたか?」とシレッとしている彼は、

「今日の反省会は会議室で行いますので、日野さんも移動して下さい」

そう言い残して、スタッフさんと共に歩き去った。



相変わらず、見事な二面性ですこと……。


呆れる私の手から、スマホが滑り落ち、床に転がる。



しゃがみ込んでスマホを拾い上げた場所は、ドアのすぐ横。



扉が開いてスタジオから出てきた佐川亜梨沙が私にぶつかり、

「キャア」と可愛らしい、驚きの声をあげた。



「あ!佐川さん、ごめんなさい!」



こんな所にしゃがんでいた私が、全面的に悪い。


すぐに謝ったけれど、やっぱり迫力ある目で睨まれてしまった。



佐川アナは会議室に向け、足早に去っていく。


睨むだけで会話してくれない美しい後ろ姿に、今日も小さな溜め息をついていた。



東京に来て、三ヶ月半ほど。


自分では結構頑張っているし、それなりに成果も出ている気がするんだけどなぁ……。


佐川アナはいつになれば、モーニング・ウインドの仲間として、私を認めてくれるのだろう……。



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