俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


立ち上がった風原涼はドアノブに手をかけ、

肩越しに振り向いて、こんな言葉を私に残した。



「それ、桜テレビ一階の売店で土産物として売ってるヤツ。

お前のために、急いでADに買って来させたんだ。

次東京に出てくる時は、北海道のキャラクターじゃなく、うちのキャラクターパンツを履いてこい。

じゃあな」



ハハハと笑いながら風原涼が出て行き、パタンと扉が閉められた。



私は一人、誰もいない控え室に残される。


まだ驚きの中にいて、座り込んだまま、後数分は動けそうになかった。



世間に広く浸透している風原涼のイメージは、真面目で知的で、爽やかなイケメンアナウンサー。


私も、彼はそんな人だと信じていた。



そのイメージが今、ガラガラと音を立てて崩れていく……。



表の顔と裏の顔。

裏の顔は、人をおちょくるのが好きな、迷惑男ということか……。



収録も、佐川亜梨沙も、風原涼も、思っていたのと大分違った。



東京って……なんて恐ろしい所なのだろう。



数分して、うららちゃんのパンツをポケットに突っ込み、何とか気力を振り絞って立ち上がる。



二度と東京に来るものか!と心に誓いながら、桜テレビ東京本社を後にした。




――――……





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