センチメンタル・スウィングス
「・・・もーも。もーもーこー」
「ん・・・・・・!」

パチッと目が覚めた私の眼前に、和泉さんのハンサムな笑顔があって、それでまたビックリしてしまった。

「おはよ」
「あ・・・ぉはよぅ、ございます」
「ごめんな、起こして。でも仕事だからさ」
「あ!」

ガバッと跳ね起きたと同時に、狙うように唇に軽くキスをしてきた和泉さんは、すでにスーツを着て、行く準備を終わらせているみたいだ。

「なんでもっと早く起こしてくれなかったんですか」
「まだ時間あるって。それよか、桃のにおいが薄い」
「は?なんですか、それは」
「俺とおんなじにおいする」
「え!それはちょっと・・・もう一回」
「しよっか」
「シャワー浴びてきます!」

慌ててベッドから下りた私は、歩きながら後ろをふり向くと、「まだ時間あるんですよね?」と和泉さんに確認した。

「あるよ」と言った和泉さんの笑顔が、いつもより穏やかに見える。
そして、そんな彼がとても・・・愛しいと思った私の手が、彼を掴むようにピクリと動いた。


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