【短】溺愛ショコラ



『これからは、俺の傍にいろ。一生な。』

「……っ、はい。」


どちらからともなく、顔が近づき、触れるだけのキスをした。


彼氏にフラれて沈んだ私に愛を囁いたのは、オネェでした。

彼は私の憧れで。

一生越えられない異才を持つ人で。

彼に囁かれた愛をにわかに信じることなんてできそうになかったけれど。


彼が私に注ぐ愛は、こっちが驚くほどにストレートで大胆で。

彼の不器用な優しさに、いつのまにか自分自身がほだされていたことに気付いたころには、彼に堕ちていた。


「……先生、とりあえず…原稿の執筆をお願いします。」

『あらあら。どこまでも真面目な子★ホントに可愛いわぁ~』


忘れていた仕事。

締め切りは1週間。私の力じゃ締め切りを長引かせることなんてできないのだから、先生には頑張ってもらわないと困る。


「そんなこと言ってないで、早く仕事なさってください!」

『その前にキスを――』

「原稿書き上げるまでお預けです!」

『ひっどーい!』


ビジネスオネェなんて変わった皮を被っている先生とちんちくりんな私の恋は、まだまだ始まったばかりのようです。



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