イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
ああ、もうどうにでもなれ!

「はい。誓います」

神父の目を見て、私は仕方なく偽りの言葉を口にする。

ほとんど話した事もないこの男をどうして愛せよう。

確かに顔は美形だ。それに、シルバーの細いメタルフレームのメガネも凄く良くお似合いで。メガネ男子が好きな女なら絶対惚れるだろう。この顔だけで。

漆黒の髪に彫刻のような綺麗な顔立ちをしているせいで、余計に冷たく見える。実際冷たいけどね。

普通、新婦が式の当日逃亡したら、式を中止するでしょう?

でも、この男は私を身代わりにして強行したのだ。



遡る事一時間前。

姉がみんなをびっくりさせたいからと言い張って、姉がドレスに着替える間、両親と私は花嫁の控え室から追い出された。

仕方なくホテルのラウンジでコーヒーを飲み時間を潰すが、三十分経っても母の携帯に姉からの連絡がこない。

何かあったのかと不思議に思って母と一緒に控え室に戻ると、そこには誰もいなかった。
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