イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
ああ……やっぱり刹那さんか。今日ってもう木曜日なの?

でも、最後に声を聞けて良かった。

「……お姉ちゃんと……お幸せ……に」

自分に残っている力を振り絞って、私は呟く。

私……もう駄目かも。

もう立ってられずその場にくずおれそうになると、刹那さんに抱き抱えられた。

「おい、桜子!何があった?」

刹那さんが慌てた様子で私に声をかけるが、もう言葉を交わす気力もない。

遠くなる意識の中、私は結婚指輪の心配をしていた。

「指輪……外ずさなきゃ……刹那さん」

「指輪を外すって……何を馬鹿な事を言ってる?桜子?」

刹那さんが私の頬をペチペチと叩くが痛みは感じない。

「指輪……無駄に……なっちゃった…ね」

うわ言ように呟き、私は意識を手放す。

「……秋人の奴、また余計な事を言ったな」

刹那さんが私の身体をギュッと抱き締めながら、舌打ちして久世さんに悪態をついていたなんて私は知らない。

夢の中で私は何故か人魚姫で、お姉ちゃんと刹那さんの結婚式を悲しそうに見ていた。

ああ……私はこれから泡になるのか。
< 209 / 288 >

この作品をシェア

pagetop