イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
バラの花の絵は日本でもとても人気があるし、初版の絵のプレートをバラバラにして一枚十万前後で取り引きされている。

額縁に入れて壁に飾れば、立派な絵画だ。

ここで言う検品とは、ページを一枚一枚めくって落丁や乱丁がないか調べる事だ。

古い辞書なら検品作業は苦痛だが、ルドゥーテの本となると綺麗な彩色画が多いし目の保養になる。

「ひょっとして初版ですか?」

ルドゥーテの本を見てテンションが上がる。

初版となると多分……何百万もする。

「そうだよ」

久世さんが目を輝かせる。

私は荷物をカウンターの下に置いて、本を受け取ろうと手を出した。

すると、私の手を見て久世さんが表情を変える。

「桜子ちゃん、その左手どうしたの?」

あっ、早速突っ込まれた。久世さん、目敏い……。
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