イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「また明日ね、桜子ちゃん」

久世さんが手を振ると、私は彼の目を見てコクリと頷いた。

久世さんは関係ないのに巻き込んじゃってご免なさい。

心の中で久世さんに謝る。

階段を降りて店の外へ出ると、突然刹那さんが立ち止まった。

「どこにいるか必ず連絡しろ。右京だって心配する。俺だって暇じゃない。手間をかけさせるな」

冷淡な声。刹那さんの表情は見えない。

手間をかけさせて悪かったですねって言いたかったが、拳を握り締め何とか堪える。

「……はい」

右京さんに会ったらちゃんと謝ろう。彼もひょっとしたら刹那さんに叱責されたかもしれない。

「そんなにバイトがしたいなら続けていい。但し、今日のような勝手な真似はするな。今度やったらどうなるかわかっているな?」

「……はい」

私は悔しくてギュッと唇を噛み締める。

ここで「いいえ」と言えたらどんなにいいだろう。

刹那さんに「いいえ」と言う事は許されない。
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