蟲狩り少女
あたしが振り返るとほぼ同時に視線を逸らした男子生徒がいた。


坊主頭でいかにもスポーツができそうな子だ。


クラスも同じみたいで近い位置に座っている。


あたしは視線を前へ戻し、手を膝の上で揃えた。


胸の中に不安が生まれる。


春は蟲が這い出てきて、そして卵が羽化する時期だ。


この時期に頑張らなければ、あっという間に世界中が蟲で覆い尽くされてしまう。


あたしはせわしなく周囲を見回した。


蟲の姿は……ない。


ひとまずホッと胸をなで下ろし再び視線を自分の膝へと下げたのだった。
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