ごめん、好きすぎて無理。
『…いけない?』
いけない、に決まってんじゃん…。
…てか、その発想が分からない。
だって、海はお前の事、好き、なんだぞ?
なのに、俺を好きとか……
『他人を巻き込んでまでこんなことすんの?』
俺の言葉に、紗奈は完全に俯いた。
それでも俺は言葉を続けた。
『海と付き合ってるなら、海のことだけ見てろよ。
俺は、俺たちは、もうとっくに終わってる仲だろ…』
そう、もうとっくに終わってる。
俺があの日、紗奈の手を離した、あの日から、もう終わってる。
『…終わらせたくないから。
終わらせたくないから、ここまできたんだよ!!』
俺の言葉に、紗奈は大きな声で、そう言った。
いや、言ったというよりも、むしろ叫んだと言ってもいい感じだ。
『…終わらせたくもないも、俺たちはもう終わってるだろ』
『……突き放す人は楽でいいよね?
でもね、突き放される方は簡単に切り替えなんか出来ないの!
私はあの日からずっと、切り替えたことなんてない…』
そして、紗奈は俺の目を見つめた。
まばたきも忘れたかのように、ただ、真剣に俺の目を見つめていた。
『陸、私は陸のことが好』
『駅、このまま、まっすぐ行ったところだから!』
俺は紗奈の言葉を遮り、そう言った。
『……なんで…?』
紗奈のその心細い声に胸が痛む。
『無理だって。
あの頃も、今も、紗奈とは無理』
それでも、そんな風に思ってしまった心に蓋をするため、俺は紗奈にビシッと、そう言った。
言い終わり、紗奈の今にも泣きそうな顔を見つめ、そして踵を返す。
『今のはなかったことにしてやるから。
気をつけて帰れよ?』
俺はそれだけ言い残して、紗奈とは逆の、今まで歩いてきた道へと歩みを進めていく。
紗奈は追いかけてはこなかったー…。