彼と私の事情
慌てて家に帰って寝室に向かうと、眉間にシワを寄せながら寝ていた。

「う…あ…」

うなされている上に汗もすごい。

汗だけでも拭いてあげようとタオルで額を障ると

「…ん…」

うっすらと目を開けて、私を見ていた。

「…あ、起こしましたか?だいじ…」

大丈夫ですかって言いたかったけど、
彼の腕の中に引っ張られる方が先だった。

具合悪いのにその力はどこからでたんだろうか。

急にそんなことするもんだからドキドキする自分とで訳がわからない。

「…」


いくな、と聞こえるか聞こえないかぐらいの声で彼が呟いた。

彼の過去の深い闇がこんなにも彼を追い詰めている。
どうもできない私は、彼の腕の中で抱き締め返すぐらいしかできなかった。
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