ハートブレイカー
「浪川さん。赤ちゃんのお父さんは、このことを知っているんです か?」

穏やかな声音で私に問いかけた男の先生の目は、憐れみに満ちていた。
きっとこの人は、そういう人たちを何人も見てきたのだろう。
つまり、望んでいない妊娠をしてしまった女性たちを。

優しい顔の中に垣間見えた責める表情は、こう言っている。
無駄に命を増やしちゃって。
傷つくのは女のほうなんだから、ちゃんと避妊しないと。

脆い女だと思われているのだろうか。
そして私も、その人たちの一人だと思われているのだろう。

私は少しうつむくと、フッと笑った。

・・・あ、今危ないヤツって思われたかも。
でも、どうでもいい。
この人にも、誰にも・・・彼にも。
とにかく、男の人を頼ろうなんて期待、してないから。


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