不機嫌プロポーズ(仮)




その日、いつも通りに仕事を終え、家に帰ると、彼は既に帰宅していて、わたしが夕食を作るのを待っていた




『遅い、のろま。腹減って死にそう』




なら自分で作ればいいじゃんと思っても、言わない




この前それを言って、また散々なことを言われて、恐ろしく落ち込んだことをわたしは忘れない




いつもならわたしが夕食を作っているとき、彼は大抵居間でテレビを見ているか、お風呂に入っているのだが




今日はどうやらその日らしい




定期的にやって来る、不機嫌な彼がわたしを求めてくる日






彼はどこからともなく持ってきた椅子に座り、じっとこちらを見ている




何も言わずただただじーっと




最初は気になって作りづらいなぁと思ってはいたが、料理が進んで行くうちにそんなことを考えている暇はなくなった




失敗しないように細心の注意をはらいながらの料理に邪念は禁物




少しでも集中を切らすと、またいつものように真っ黒に焦げ、ひゃっ!!






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