キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「あら~、私お得な席ですね~。男性二人に挟まれて、店長のお顔を前から見られるなんて」


平尾さんがニコニコと嬉しそうに笑う。

そうか、気難しい平尾さんのご機嫌を損ねないためなのね。


平尾さんは私が「はっちゃん、はっちゃん」と他の二人にちやほやされていると、ときどきムッとしたような表情を見せることがある。

私しか気づいていないと思っていたけど、店長もきっと気づいてたんだ。


もちろん、矢崎店長に逆らう猛者はいるわけもなく、それぞれが勝手に決められた席に着いた。

そのあとは長井君がてきぱきとその場を取り仕切ってくれて、5分後には飲み物がテーブルにそろった。


「……じゃあ、椎名初芽さんの入店を歓迎して、乾杯!」


乾杯すると同時、平尾さんがせっせとお肉を焼き始める。

その間に、男性陣はもうビールをあおっていた。

私はサラダを取り分け、ちまちまと食べ始める。


「なんか、はっちゃんが草食ってると、ウサギに見える」


長井君がくだらないことを言って、店長以外が笑った。


「そんなに鼻がひくひくしてた?」

「ちがうよ。顔の種類が、小動物っぽいから。リスとか、ウサギとか」

「可愛いよね、はっちゃん」


既にほろ酔いな杉田さんが褒めてくれたので、あいまいに笑っておく。

すると、店長がぼそっと言った。


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