【完】一粒の雫がこぼれおちて。





体が揺れてる気がする。


何だか、暖かい。


心地好くて、ずっとこのままでいたい。



ふと目を薄く開いたとき。



「今度、倉橋…………僕のものに手を出したら、容赦しないって。」



目の前で、潤平くんにそう告げる和泉くんの姿があった。



どうして。


どうして、和泉くん。



どうしてここにいるの。



私は、大ちゃんのものだよ。



言いたいことは沢山あるのに、どの言葉も声にはならなかった。



ただただ、この瞬間だけは。


和泉くんが〝僕のもの〟って言ってくれた、今だけ。



この大きな背中に、縋り付いていたかった。



……生温い何かが、私の頬を一筋、伝っていった。





< 110 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop