極上ドクターの甘い求愛



お昼時間を終えた私は、午後に入院してくる患者さんに消化器外科の薬歴があると聞いて、その患者さんのカルテを拝見するために消化器外科に向かった。

病院では電子カルテが普及していて、カルテを見るなら薬剤部でもアクセスすることはできるのだけど、患者さんの過去のデータまではカバーできておらず、そういったものは全て紙カルテで保管されているから。

そんな私を迎え入れた消化器外科のナースさん達は、膨大な数の中から患者さんのカルテを探している私に近づいてきて囁くように言ったんだ。

"こんなことでわざわざ来るなんて、岩崎先生の気を引きたいとしか思えないんだけど。もしかして、ここに来れば岩崎先生に会えると思ってるの?バッカじゃないの、仕事しろよ~!"

傍からしても耳に入れたくはない悪口を、平気で口に出すナースさん達に、心の底から何か黒いものが上がってくる感触がしたけれど、今は仕事中だと必死で抑えたんだ。

それをナースステーション前をたまたま通りかかった前田先輩が見ていて、薬剤部に戻った私に近寄ってくるなり先輩は私を呑みに誘ったのだ。


『仕事してないのは、そっちだろって話よね!あーもう、ムカつく!何であんな肝心な時に岩崎はいないわけ!?』

「…先輩、せめて"先生"はつけましょうね、」

『アイツに"先生"なんて敬意を払う必要なんてないのよ、咲坂ちゃん!』

「……。」


ダメだ。一回ヒートアップしてしまった先輩を止められる術がないことくらい、ここ1年の付き合いで理解している。

物凄いスピードでビールを煽っていく先輩を、隣で呆然と見ていることしかできなかった。



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