気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
(その七瀬さんが昼休みにこんなところで……俺、もしかして七瀬さんの弱みを握っちゃったって感じ?)

 透也はニヤけそうになる顔を引き締めながら、そうっと首を伸ばした。彼のいる場所から見えるのは、凜香の肩から上の後ろ姿だけだ。

(もしかして、男が跪いてるとか……?)

 ベンチに座る凜香のタイトスカートをまくり上げ、太ももの間に顔をうずめる男の姿を想像して、透也の体がカッと熱くなった。それは木陰から差し込む日差しのせいではない。

(相手の靴だけでも見えないかなぁ……)

 好奇心に駆られて視線をベンチの下の方に移動させたが、あいにく黄色やオレンジに咲き誇るガザニアのプランターに遮られていて、何も見えない。

「あぁん……耐えられない……好きぃ……」

 凜香の声があまりに甘すぎて、透也の体の一部が興奮を伝えてきた。

(ヤバイ。マジでヤバイ。早く終わってくれ……)

 透也は雑誌で顔を隠すと、両耳に指を突っ込み、目を閉じた。

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