ジキルとハイドな彼
しかし、入社二年目に私が茨城県の水戸に赴任になった時の事だった。

水戸という土地に何故か私の人柄がマッチして、営業成績が抜群にあがり、社長賞を受賞した。

裕子の私に対する態度が一変したのはそれからだった。

何かにつけて私に対抗心を抱いてくるようになったのだ。

社長賞の実績が買われ私が東京の本社に異動になれば、社内公募を得て裕子も後を追いかけるように本社に着任になる。

ボーナスで自分のご褒美にとブランドのバックを買えば、翌週には同じブランドのバックを裕子は持っていた。

私が取引先をA社にすれば裕子もA社に変更する…。

見事なくらい、やることなすこと被せてくる。

当事者である私からすれば彼女の恐ろしいほどの闘争心と執着心は少々厄介ではあったが、周囲の人には計算づくしの天然ボケで笑顔を振りまき、その本性を見せないのだから食えない女だ。

しかし実際のところ、裕子が私に執着していても、他人にさほど興味のない私は、自分さえ仕事に励んで結果を出せばそんなことはどうでもよいとすら思っていた。


しかし甘くみていたツケは思わぬところで返ってくる事になる。

交際していた彼をまんまと寝取られたのだ。

まさか恋愛にまで異常なほどの対抗心を燃やしてくるとは…。

私が迂闊だったと言えばそれまでかもしれない。

しかし、4年間の遠距離を経て愛を育み、結婚を意識し始めた頃合いに横から掠め取られた日にはさすがに憤懣やるかたない。

その日から裕子は怨敵となったのだった。
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