海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
『嫉妬してばかりの自分なんて嫌だ…。』


そう思いつつ、出来る事なら他の生徒と親しく、楽しそうにしている相葉先生の姿は見たくない。


それも私の本心だった。


私はパソコンのキーボードを叩いていた手を止め、一瞬だけ目を瞑った。


スーッと深く息を吸って、ゆっくりと吐き出す。


まずは少しでも冷静になりたかった。


『集中しなくちゃ…。』

心の中で、そう唱えてみる。


“出来ない方がいい”なんて思っちゃいけない。

合格して、先生にも喜んでもらうんだ。

毎日のように添削をしてもらっているんだもの。



そう思い直して、私はゆっくりと目を開いた。


目を開くと、さっきまで斜め前にいた相葉先生が私の隣にいた。


目が合った私に、相葉先生は微笑みながらポンポンと優しく頭を撫でてくれた。


たったそれだけで、涙が出そうな程、幸せな気持ちが心に広がる。


先生の優しい瞳が、私を見ていてくれるだけで

先生の温かい手が、この髪に触れるだけで

たったそれだけで

こんなにも幸せな気持ちになれるんだよ―…

先生、あなたはきっと気付いていないでしょう…?



「がんばるね」


私は声に出さず、口パクで相葉先生にそう言うと、先生は優しい笑顔のまま軽く頷いた。



『今の私のままで突き進むしかない。』

そう思えた瞬間の出来事だった。
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