海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「どうした?」


それまで机に向かっていたらしい相葉先生は、椅子の背もたれに片腕を乗せて振り返った。


相葉先生はいつもと変わらない様子で振り返っただけなのに、そんな仕草一つで簡単に私をときめかせる。


顔が紅潮するのを感じた。



「すみません、添削して下さい。」


そう言って、自宅でプリントアウトしてきた用紙を差し出すと、


「自分で確かめながら文字数を数えてみれば出来るだろう?」

と、先生は少しだけ面倒臭そうな顔をした。


「だって、ビジネス文書が合ってるか分かんないんだもん。」

そうやって私がゴネると、


先生は、

「んー…。」

と、赤ペンを手に持ち、私が持参した用紙にチェックを入れ始めた。



『なんだかんだ言っても、必ず先生は見てくれる。』


そう思いながら、私はチェックする先生の横顔を見つめた。

この頃も今も、相葉先生が沢山の時間を私の為に使ってくれていた事に心から感謝してる。


そして、

「ここで1文字…。」

ブツブツと小声で呟きながら赤ペンで印をつけていく相葉先生を見つめながら、私は修学旅行の時の事を思い出していた。


京都で先生が買ったという、バッグの事―…


修学旅行が終わっても、私の心の中で引っ掛かったままになっている出来事の一つだった。


『大崎先生にあげたの?』


そう思い始めたら、どうしようもなく気になって、


「先生?」

と、私は先生に声を掛けた。
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