やわらかな檻
紋白蝶
 白い蝶が、畳の上でひらひらと舞っていた。


 紋白蝶が部屋に迷い込むのは、そうあることでもない。

 私も三年ここで過ごしているが、実際そうなるのは初めてだった。

 自由に、不規則に揺れる一対の影。天井からの眩しい明りに照らされ、濃いそれが畳の上に落ちる。

 なぜか自分でも分からなかった。


 でも急な、意味の分からない衝動に駆られて。気付けば、私は縁側へと続く襖を閉めていた。
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