やわらかな檻
 言っている言葉は子供のようだが、その艶めいた言い方に一種の諦めを感じた。

 優しく、けれど拒絶は許さないかのような。啄ばむように下りてくる首筋への口付けを、私は僅かに目を伏せて受け入れる。

 私が何をされても抵抗出来なくなってしまったのは、きっと幼い頃から躾られたから。

 ……仁科 慧に。


「私が執着するのは、今のところ小夜だけですから。簡単には手放しませんよ」



 知らない、そんなこと。


【白夜後日談/極夜/終】




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