インビジブル・ブルー
『楽しい一日になりそうだわ』

そう言ったガクの言葉が、頭の中でリフレインした。

途端に激しい目眩と嘔吐に襲われ、丸太の壁にもたれ掛かる。「助けて」と心のどこかが悲鳴を上げていた。

「今さら何を……」

自嘲にも似た呟きが溢れた。

すべては僕が蒔いた種なのだ。いくら僕が目を逸らしても何一つ解決しない。誰も救ってなどくれない。そんなことは身に染みて分かっていた。

僕は頭を振り払った。脳の奥がジンと痺れた。そしてようやく意を決し、小汚い窓から中の様子を覗き見た。

テーブルが見えた。ガクが用意した三人分の朝食の皿が、食べかけの状態のまま残されていた。

少しずつ視線を移す。

壁、柱、階段、吹き抜けになった二階。部屋の入り口。扉は閉まったままだ。

再び一階に目を戻す。

薄汚れたフローリングの床、奥のアトリエへの入り口。

ひととおり見回してみても、二人の姿は見あたらなかった。

「ガクの部屋……か」

独り呟き、生唾を飲み込む。そっと玄関のノブを回す。カチリと乾いた音を立て、扉が開いた。

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