Devil's Night
 
 みんなが『うらやましい』と言ってくれた、高級住宅地の中の1戸建てだったが、実際には、不便で大変な生活が待っていた。


 日本の食材は郊外の小さなスーパーにしかなく、いつも品薄で、賞味期限の切れた乾物を平気で置いていたりする。
 水道の配管や電気の配線に不具合が生じても、業者は日本みたいにすぐに来てはくれず、1週間、リビングの明かりがつかなかったこともある。


 そして、5歳の娘、絵莉花を通わせている日本人幼稚園は、慢性的な保育士不足で、週に3日しかやっていない。仕方ないので、あとの2日は言葉の通じないキンダーガーデンへ通わせていた。


 それでも、娘はあっと言う間に、この生活に慣れ、片言ながらネイティブの子供たちと、会話をしている。それなのに、私は苦手意識が強すぎるせいか、英語がちゃんと聞き取れず、いつまでたっても自信を持ってしゃべれない。キンダーガーデンの先生が言っていることも、完全には理解できず、入園させたばかりの頃は、しょっちゅう絵莉花に忘れ物をさせていた。
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