極上な恋をセンパイと。


「なんなの、アレっ!」


タン!と持っていたカップをテーブルに置いた。
勢い余って、中のカフェラテが少しだけ零れてしまった。



でも。
あたしにはそんなのはどうでもよくて!

ただ、無性に腹が立っていた。


だって!
だって、なんなのかなあの態度!


センパイって、久遠センパイって、雰囲気だけでキス出来ちゃうような人だったんだ。
見損ないましたよ、センパイ。


センパイの態度が何も変わらないって事は、あのキスはむしろなかった事にされてる?

そうなのっ!?


ああ、もうっ!悔しいっ
センパイの仕草や態度に一喜一憂していた自分が、本当に情けない。



「……」


嬉しかったのに……。

センパイのキス、優しくて、すごく甘くて……。
幸せだなって……、




「……はあ」


思わずため息が零れたその時だった。

誰かがあたしの顔を覗き込んだ。


ふわりと甘い香水の香りを連れて、楽しそうな笑顔を零しているのは柘植さんだった。



「やあ、渚ちゃん。一緒にいいかな」

「……あ、柘植さん。どうぞ」



あたしの言葉を確認すると、柘植さんは小さく微笑んで向かい側に腰を落とした。

持ってきた缶コーヒーのプルトップを持ち上げながら、可笑しそうにあたしを見つめている。



「……あの、なんですか?」


おずおずと尋ねると、「ん?」と口の端を持ち上げて肩を揺らした。


「いやー、遠くから見てたけど。怒ったり落ち込んだり忙しそうだったから」

「え?」

「素直なんだね、渚ちゃんは」



そ、それって……。


そこでハッとして思わず両手で頬を抑えた。


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