幸せの契約
犬居さんが速やかに玄関に備え付けられたモニターをチェックする


「はい。どちら様でしょうか?」


『牧野と申します。あの、こちらに住んでいる鈴ちゃんに会いに来たのですが。』


緊張しているような
中年の男性の声



遠巻きに聞こえた
その声に私の背中に冷や水が落ちた



「さようでございますか。ただいま主人に確認いたしますので少々お待ちください。」



犬居さんはインターフォンをいったん切ると


私に向き直った



「牧野様と申す方が鈴様を訪ねていらっしゃってますが…」



身体がガタカダ震え出す

寒気が私の体を駆け抜けた


「…鈴様?」



犬居さんは心配そうに私を見つめる


「会いたくない。と伝えてください。」



小さく呟く私

「どうかなさいましたか?お顔が真っ青ですよ?」


犬居さんの温かい手が私に触れようとした時



ギィ―



玄関のドアが開いて


中年の男女が入ってきた


そして
男が私を見つけた瞬間に微笑む


「久しぶりだね。鈴ちゃん。」


その声は私を鎖のように締め付けた
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