砂漠の王と拾われ花嫁
(もうっ! どこもかしこも熱い……火傷しちゃうよ。これって……夢じゃないの? 五感が働く夢なんて……本当に……夢じゃないの?)

そのとき、どこからか風が吹き、莉世の全身に砂がパラパラ当たる。そして続いてものすごい風がビューンと吹いて、莉世はとっさに手で顔をかばう。目に砂が入るのは阻止できたが、鼻や口に砂が入り込み、ゴホゴホッと咳き込む。

「もうっ! なんなのっ! 痛っ!」

風は一瞬のことで止んだが、一面の黄金色の砂の景色は変わらない。

莉世は力なくその場に座り込んだ。

「……これって、夢じゃない? じょーだんだよね! お父さん! お母さんっ! お姉ちゃん!」

口を開くだけで、熱砂が喉を焼き付けるように入り込む。喉がカラカラだった。

熱風が顔や身体に当たって、どこもかしこも痛い。

「どうしてわたしがこんな所にいるのっ!?」

まったく訳が分からず、パニックを起こしそうになる。

(ダメだよ。莉世、しっかりしなくちゃ。夢に違いないんだから。でも、ここにいても仕方がない。うん、歩こう)

しかし、数歩も歩かないうちに意識が朦朧としてくるのがわかった。

崩れるように熱い砂の上に倒れる、莉世の身体。

(眠ったら、夢から覚めるかな……)
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