砂漠の王と拾われ花嫁
「我が愛娘に持っていないこの容姿が殿下を惹きつけるのじゃろう まさしく見事な髪と瞳だ」


タヒールの子供は男子が5人女子が3人。


末娘は莉世と同い年だと聞いていた。


後ろにいるタージルは7番目の息子で20歳。


若いながらも頭は切れると言う噂で、タヒールの手伝いをしていた。


タヒールの指は髪から頬に移ると、背筋がゾクッとして思わずその手を振り払った。


パシッと言う乾いた音が響く。



その瞬間、後ろにいた護衛の男が無言で大臣と莉世の前に立ちふさがる。


タヒールは怒りをあらわに叫ぶ。


「この娘!殿下の妾を理由にのさばる悪女め!」


タヒールは護衛を押しのけ自ら莉世の腕を掴んだ。


「きゃっ!」


華奢な腕を後ろでねじ上げられて、莉世はひどい痛みを感じた。



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