狐面の主人


こうして今、二人は夫婦の契りを交わしたことになる。



けれどまだ、試練は続いていたのだった。








《下らぬ茶番は飽々よ…。



さぁ、炎尾…。
貴様の愛したこの女に…
己の醜き様を、とくと見せてやるが良い。》



炎尾は躊躇した。

彼には確信があったからだ。


自分の能面を取り、真実の姿を晒したとき、五穂は必ず、自分を拒む…。








「…暫し、猶予を頂きたい…。



最期に…この者に言わねばならぬ事が…。」




《……ふん、良かろう…。》




炎尾は五穂を見つめた。


< 99 / 149 >

この作品をシェア

pagetop