気付けば溺愛
野崎さんとすれ違う時、睨むように視線を向けていた拓真は、私の目の前にくると、じっとそのままで、ただ私の目を見ていた。

絶対何か言われるだろうって構えてた私は、意外な拓真の様子に戸惑ってしまった。

「拓真…?どうしたの」

「……」

「あの…、とりあえず、私怒ってるん…だけど?」

読み取れない表情の拓真にそっと近付いて腕に手を置く。

「…え?」

震えてる…?

握り締めた手。微かに震える腕…。

見上げると、切なく笑う瞳と…同じく震えている唇。
< 32 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop