Symphony V
「そういえば、紹介がまだだったよね」

コホンと咳払いをして、稜夜が唯に言った。

「唯ちゃん。こいつはレオン。俺が去年アメリカに留学してたときにホームステイしてたうちの息子で、親友なんだ」

「はじめまして」

にこっと笑うレオン。唯はドキッとする。

「で、レオン。この子は唯ちゃん。俺の学校の後輩で、偶然、ライブで一緒になったんだ」

「はじめまして。唯です」

ぺこっとお辞儀をする。

「じゃ、唯もあのライブに行ってたの?」

聞かれてこくんと頷いた。初対面でいきなり呼び捨てにされて、少し戸惑ったものの、向こうじゃさんだのちゃんだのといった敬称はつけないんだっけ、と、すぐに思い出す。

「はい!私、キアリーが大好きで。まさかライブに当たるなんて夢にも思わなくって」

恍惚とした表情を浮かべる唯。稜夜はくすくすと笑った。

「あ、そういえば、さっきはどうしたの?」

稜夜に聞かれて、トリップしていた唯ははっと我にかえる。

「え?あぁ、すいません、ほんとにさきは急に大声出して」

苦笑いをしながら唯はまた、レオンの手を見た。

「あの、レオンさんって、今日、コンビニでペットボトルのジュース買いませんでした?」

聞かれて首を傾げる。

「今日?そういえば、昼前に1度、コンビニに行った気がするけど…なんで知ってんの?」

不思議そうな顔で聞かれて、唯は苦笑した。

「私、そこでバイトしてて。レオンさんの手を見て思い出したんです」

少し照れながら答えると、レオンは少しだけ嬉しそうに笑った。
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