Symphony V
1時間ほどで県警に到着する。駐車場にとめて、車から降りる。2人は顔を見合わせると、小さく頷いて、中へと入った。

自動ドアが開き、中からひんやりとした涼しい空気が2人を包む。入ってすぐのところにいた婦警をつかまえると、事情を説明して、村儀を呼び出してもらった。
そばにあった長いすに座って待つこと数分。すらっとした中年の男性と、背の小さくて若い女性がやってきた。

「…わかった」

さっき唯と話をした府警と一言二言言葉を交わすと、男は唯の方へと向かって歩いてきた。

「あなたが、東峰唯さんですか?」

念のため、といった風に確認してくる男に、唯ははい、と頷いた。

「こちらは…?」

ちらりとレオンの方を見て、男はまた聞いてくる。唯は少し、不快そうな表情で答えた。

「こちらはレオン。レオンも稜夜先輩の友人なんです。今日はたまたま一緒にいたので、一人じゃ心細かったものですから、ついてきてもらったんです」

男はあぁ、と短く言うと、こちらへ、と短く言って、くるりと向きを変えた。

「…私、あなたのこと知りません。人に名前を聞いておいて、自分は名乗らないって失礼じゃないですか?」

少し眉をひそめながら唯が言うと、男はくくっと小さく笑った。

「これは失礼。私は村儀といいいます」

村儀はそう言うと、警察手帳を見せた。警察手帳を見た瞬間、唯はさらに眉をひそめた。

「警視庁捜査一課…?何でそんな人がここにいて、担当してるんです?」

そんなに警察の内情に詳しいわけではないが、警視庁の管轄は東京都で、しかも捜査一課といえば、ドラマなんかでもよく出てくるが、凶悪犯罪を主に取り扱っている部署だったはずだ。
唯の言葉に、村儀はふぅ、と息をついた。
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