優しい悪魔−マキコと和夫−
書斎の机の前に座ると、秀一は両手で顔をおおった。
そのまま、子供の時を思い出していた。
(姉が家出したのが、中学二年の時だったな……。)
警察に補導されて家に帰ってきた時、二つ上の姉は真っ青で人形のように無表情だった。
2、3日後、母親が姉を病院へと連れて行く。
その晩、両親がケンカしているのが聞こえてきた。
「あなたは、自分の尻拭いを全て、私にさせるじゃないの!」
「うるさい、口答えするな!」