なんでも屋 神…第一幕
「お前、俺から買ったベレッタで[三谷組]相手にヤマ践んだろ?」



兄ぃは背もたれに預けていた身体を前に倒して、俺の顔を下から見上げてくる。



「完璧な夜逃げだった。だがそれを何で俺が知ってるのか…気になるだろ?」



俺は兄ぃの言葉に表情を崩さなかった。出来る限りシラを切り通す。



なんでも屋としての守秘義務は、例え兄ぃが相手でも守らなければならない。



兄ぃはそんな俺の様子を、黙って伺っている。



俺が口を割らないとみると、兄ぃは手で廊下にいる誰かに合図を送った。



俺が振り返る頃には、襖の向こうから一人の若衆が現れた。



此奴…見覚えがある。でも何処だ?何処で見た?



その若衆は俺の横を通り過ぎ、丁度俺と兄ぃを挟むテーブルの中間の位置で静かに正座した。
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