なんでも屋 神…第一幕
重い瞼を上げながら、ナタリーの置いていった手紙を無造作に破る。





坊ちゃま



奥様が倒れましたので、至急帰国の程お願い申しあげます。
            イト





…お袋が倒れた?



所々に穴の空いたデニムに無理矢理足を通し、今持っているだけの現金をポケットに突っ込み、部屋のドアを震えるぐらいの強さで勢い良く開けて出て行く。



「ナタリー!ちょっと日本に帰ってくる!」



古びたロビーに居る困惑気味のナタリーを横目に、モーテル前に停めた水色の66年インパラに乗り込んだ。





その十二時間後、俺はコバルトブルーに輝く空の中に居た。



イトさんからの手紙の続きには、お袋が近所の奥様連中と楽しく呑んで帰ってきた時、玄関でいきなり倒れ込んだと書かれている。
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