なんでも屋 神…第一幕
俺はタバコに火を付けて、煙を吐きながら天井を見上げた。



「…そうか。まだしぶとく息をしてる奴がいるのか…。」



一回り小さくなってきた球体の氷を見て、俺は一気にグラスを空けた。



「大丈夫だよ。昔みたいに兄ぃに迷惑はかけねぇ。」



俺のその言葉に兄ぃは正面を向き、スコッチを一口飲んで溜め息を吐く。


「馬鹿野郎、お前の迷惑なんざ俺は気にしちゃいねーよ。お前は俺の弟分だからな…面倒臭い事になったら俺に言え。俺の力でなんとかしてやる。」


俺は兄ぃに礼を言って、床に置いてある[虎屋]の袋を手に取った。



そんな俺の腕を掴んで、兄ぃは小声で念を押す。



兄ぃの言葉に小さく頷き、薄暗いバーを出てタクシーに乗り込んだ。



手にはずっしりと重い、[虎屋]の木箱に入ったベレッタ9000Sを持って、タクシーの窓から星が暗闇で瞬くのを見上げながら事務所に戻った。
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