レンズ越しの君へ
それからしばらくの間、ドキドキしてその場から動けなかった。


廉の言葉は、一体どこまでが本気なのかがわからない。


全部嘘かもしれない。


だけど…


全部本気なのかもしれない。


あたしは戸惑いを隠す為に、必死で笑顔を作った。


それなのに、顔が引き攣って上手く笑えない。


笑顔は得意なのに、廉といると調子が狂う。


さっきまでは自然に笑えていたのに、また笑えなくなってしまっていた。


そして、そのせいで蘇った緊張感に、心と体が包まれていく。


廉といると、やっぱり自分(アタシ)が自分(アタシ)じゃなくなる。


今日は“ユイ”として来たつもりだったのに、いつの間にか“澪”になっていた事に気付いた。


廉の行動に翻弄されていたあたしは、ただ彼の姿を見つめている事だけしか出来なかった。


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